「不可解」な日本? 人質への非難に驚く米社会
人質へのバッシングをめぐって,「日本社会の特異性」だの「ムラ社会」だの,「日本国民」あるいは「日本人」と結びつける議論が噴出している.
思い出せばよい.アメリカでは反戦Tシャツを着て学校に行った生徒が停学処分を受け,裁判所もそれを支持し,退学に追い込まれたことを.ブッシュ政権に対して批判的な立場をとっている9.11の被害者家族に対するマスメディアや国民の悪意に満ちた行動を.
多数派とは異質なものに対する抑圧は,ナニ人だとかには関係ない.今回の人質に対するバッシングからわかるように,政府が先頭に立ち,マスメディアがそれに続けば,国民はついてくる.国民とはそういうものだ.戦時下においては,こうした国民という集団の性質がもっとも露わになる.
この記事には「大学生の男性は「政府が国民をどう扱うか、また国民が“お上”の意向に疑問を抱くかどうかは、国の成熟度の指標」と意見を述べた」とあるが,最近の調査によっても57%もの人間がイラクが9.11に関係していたと信じ込み,イラクが大量破壊兵器を持っていたと信じる者が38%もいるのがアメリカ国民である.「成熟度の指標」から言えば,違いがあるとは思えない.違いがあるように見えるのは,それぞれの国における「材料」が違っているからで,気に入らないものを「焼いてしまう」という点では違いはない.
「自衛隊はイラクに戦争に行くんじゃありません」というフレーズは,今回の事件における政府の行動それ自身によって,そのウソが明らかとなった.政府が先頭に立って,戦争に反対するものを適当な理由をつけて徹底的に叩き潰し,マスメディアがそれに続き,最後に国民.これこそが戦時下の光景なのだ.それは,ナニ人でも,ナニ社会でも同じだ.