The mask of altruism disguising a colonial war


植民地戦争を覆い隠す利他主義の仮面
石油はスーダンへの軍事介入を駆り立てる要因となるだろう


2004年8月2日
John Laughland


もし,ブレアがイラクに関して責任逃れをしているという証拠が必要だったとすれば,それは7月21日のBulter報告をめぐる下院での議論の中では現れなかったが,しかし,翌朝の月例記者会見で出てきた.スーダンにおける危機について質問されたブレア氏はこう答えた.「われわれにはこの問題に対応する道徳的責任があり,可能ないかなる手段を使っても対応すべきであると信じています」.この最後のフレーズが--マイク・ジャクソン将軍がすぐに追認したように--意味するところは部隊を派遣するかもしれないということである.そして,いつもの反戦運動家からの反応はまだない.

ブレア氏は,彼が戦った5つの戦争--彼は確実に,歴史上もっとも好戦的な首相のひとりである--すべてについて道徳的必要性を引き合いに出している.1998年のイラクに対する爆撃,1999年のユーゴスラビアへの74日間にわたる爆撃,2000年春のシエラレオーネへの干渉,2001年10月のアフガニスタンへの攻撃,そして昨年3月からのイラク戦争,これらすべては首相から見ればはっきりとした確信をもって正当化された.ブレアはクリントンによる1998年8月のスーダンのアル・シーファ製薬工場への攻撃すら擁護した.その攻撃は,本当はアスピリンではなく炭そ菌を製造しているのだというまったくデタラメな根拠にもとづいて行われた.
それぞれの場合において,戦争の口実は誤りであったと証明されたか,あるいは戦争の目的は達成されなかったが,確固とした確信は道徳と他国への攻撃の有効性に固執している.ブレアはわれわれに,コソボで起こったことは第二次大戦後に起こったいかなる事件よりもひどいと語ったが,ミロシェヴィッチの裁判はジェノサイドがコソボでは決して起こっていなかったことを示した.ハーグの国際戦犯法廷で検察官のオフィスで働く政治的活動家ですら,起訴状にはジェノサイドを決して含めはしなかった.2年間にわたる起訴手続きは,前ユーゴスラビア大統領がアルバニア系住民への攻撃を命じたことを証言するただひとりの証人ですら作り出せなかった.実際,ベオグラードで作成された軍の文書は,反対のことを示しているのである.

コソボでのジェノサイドと同様に,いまやわれわれが知っての通り,イラクにおける大量破壊兵器は,お化けの熱狂的想像とロンドンとワシントンの政治家のなかにのみ存在したのである.しかし,ダウニングストリートは最近,イラクにおける大量墓地に関するブレアの主張は誤りであったことまでも認めざるを得なくなった.墓には30万あるいは40万の遺体が見つかったと首相は繰り返したが,事実はどうであったかと言えば,イラクではほとんど遺体は発掘されず,したがってその総数,ましてやその死因については,とてもわからない.

2001年,われわれはビンラディンを捕まえるために,そして言われているところのタリバンによる世界中へのヘロイン撒き散らしをやめさせるために,アフガニスタンを攻撃した.タリバンによるヘロイン禁止は,アフガニスタンを支配した将軍によって助長され,まさにその正反対,アヘン生産の急増に置き換わる一方で,ビンラディンは自由のままである.シエラレオーネについて言えば,7月15日に公表された,世界中の生活水準を計っている2004年版国連人間開発報告書において,西側の干渉の受益者のなかで177か国中177番目であり,われわれの少年たちが行って以来,堂々たる位置を占め続けている.シエラレオーネは,文字通り地球上でもっとも悲惨な場所である.「アフリカ新時代」というブレアの約束と同じくらいに.

スーダンに部隊を派遣するという見通しに対する反戦勢力の懐疑の不在は,ダルフールに石油が存在することを考慮すれば,特別に奇妙である.2年間にわたり運動家たちは,イラクで「石油のために血を流すな」を合言葉にしてきたが,スーダン南部,ダルフール南部の両方における未開発の巨大な埋蔵が存在することについては,いまだに気づいていないように見える.石油パイプラインがイラクにおいて爆破され続けている時に,西側は代替エネルギー源に対する支配を確立することへのはっきりとした動機を持っているだけではなく,われわれの軍隊をまさに支配確立のために使うべきであるという政策を公式に採用してもいるのである.奇妙なことに,ダルフール南部における石油採掘権は現在のところ中国国営Petroleum社の手にある.中国はスーダンにとって最大の外国人投資家である.

それゆえ,われわれはダルフールにおいてジェノサイドが行われているという合衆国議会の断定について疑いの目をもって見なければならない.スーダン政府はもとより,ダルフールにおいて内戦が起こっていること,あるいはそれがかなりの数の難民を発生させている点については,誰も疑いを持っているわけではない.政府ですら,準軍事集団の略奪から逃れるためにダルフールの主要都市の外にあるキャンプから100万人近い人々が脱出していることについては認めている.スーダン近隣の国々におけるさまざまな戦争のせいで,この国は銃であふれかえっている.遊牧民サハラ砂漠の拡張によって新たな牧草地を探すことを余儀なくされているため,遊牧民と牧畜民の間で緊張が高まっている.準軍事集団は広い範囲で追剥を行い,各部族はそれぞれの私兵を持っている.これが,1999年にスーダン政府が緊急事態を宣言した理由である.

しかし,われわれのメディアはこの複雑な構図を民族浄化とジェノサイドの単純な道徳的お話に変えてしまった.Janjaweed 民兵が,疑われているところの彼らによる迫害にさらされている人たちと同じエスニック集団や同じ宗教から参加しているという事実をメディアは体裁よくごまかしている.スーダンへの干渉を求める運動家たちは,スーダン政府がこの民兵集団を支援しているとして非難している.しかし,スーダン防衛大臣が3月の議会における演説で彼らを「悪党」と非難したことには注意を払っていない.さらに7月19日には,ハルツームの法廷は6人のJanjaweed 兵士に対して,彼らの手足の切断を含む恐ろしい罰を課す判決を下した.なぜわれわれは,Janjaweed が戦っている反政府集団について,あるいは彼らが関与していると思われる残虐行為について決して聞くことがないのか?

メディアによる突然のスーダンへの関心が危機の本当のエスカレートによって引き起こされたかどうかは,まったくはっきりしない.和平合意は4月に反政府グループとの間で署名され,そしてそれは有効である.われわれのテレビに映し出される映像は昨年に見られた光景である.そして,われわれは死者の数--3万人あるいは5万人というのは適当に扱われている数である--についても疑いをもって見なければならない.われわれはコソボイラクにおいて似たような統計が,まったくの間違いであったと証明されたことを知っているのだから.スーダン政府は,2003年の紛争以来のダルフールにおける死者は,双方合わせて1200人を超えないと述べている.隣国コンゴにおいて,死者が200万あるいは300万人とも推定される戦争--われわれのメディアにおける沈黙によってのみ同等化された悲劇--が起こっている時に,なぜスーダンへこのような関心が向けられるのか?

われわれは今,飢えている赤ん坊をテレビで見せられている.しかし,われわれがスーダンを攻撃した場合に発生する手足のない犠牲者,あるいは死者をテレビは見せないだろう.人道援助は赤十字がつねに表明しているように,政治的に中立でなければならない.それ以外は,利他主義という偽善の仮面で殺戮の現実や暴力の拡大を覆い隠した,ただの古い植民地戦争でしかない.もしイラクがそのことをわれわれに教えなかったのだとすれば,われわれは永遠に何事も学ぶことができない.


John Laughland は Sanders Research Associates の associate.