教科書採択――東京の教育が心配だ


この教科書には,「歴史を学ぶとは、今の時代の基準からみて、過去の不正や不公平を裁いたり、告発したりすることと同じではない。過去のそれぞれの時代には、それぞれの時代に特有の善悪があり・・・」とある.
将来,イラク国民からイラク侵略戦争を支持した責任をわたしたちが問われた時,この教科書で勉強した子どもたちは「今の基準で告発するな」と答えるようになるのだろうか.そして,「大量破壊兵器なんてウソだったじゃないか」と問われれば,答えはこうなるのかもしれない.「当時の基準では,イラクは持っていた」,「あの時代に特有の善悪で言えばイラクは悪だった」.
「それぞれの時代に特有の善悪」は,これから将来にわたっていくらでも作られていくだろう.そして,それらにもとづいて行われたことに対する責任を問う声は--行為に先立って責任を問うことが不可能である以上--必ず後から発せられる.「時代に特有の善悪」という言葉は,責任を問う「不愉快な」声に直面した時,それに背を向けるだけの説得力を持ちえるだろうか.

参考:歴史学研究会