この10年「治安悪くなった」約9割…内閣府世論調査


警察や自治体から提供される治安・犯罪情報が「不十分」と不満を持つ人も全体の3分の2と高率で、国民の間に治安対策への懸念が広がっていることが浮き彫りになった。

まったくその通りだと思う.十分に提供されていれば「治安が悪くなった」と感じる人はこれほどいないだろうし,理由として「不法滞在者」を上げる人が最も多くなることもない.みんなが警察庁等のサイトで実際のデータを確認しなければ,これほど不安が広がってしまうのだから,政府もマスメディアも実施する前から結果が目に見えている調査をやるのではなく,もう少しきちんと情報を提供して欲しい.実現されそうもないお願いだけれど.
ところで,わたしは賃貸マンションに住んでいるが,ここにはオートロックはない.分譲にしろ賃貸にしろ最近建てられるマンションにはオートロックが当たり前のようだ.しかし,オートロックが防犯に役立つとはとうてい思えない.
当たり前の話だが入りにくいということは,まず第一に本人も入りにくいということ.自分の部屋に入るのに,どうして2回も鍵を使わなければならないのか,面倒だ.そして,入りにくいということは同時に出にくいということでもある.出るときには鍵が必要ないなど,出る時と入る時で多少の違いはあるにしろ,入りにくくて出やすい,というのは原理的に不可能だと思う.入り口をいくつも作れば,それだけ入られやすくなるから,まず入り口の数を減らさなければならない.これは出口の数が減るということでもある.玄関がオートロックでもいきなり共用の廊下から侵入されたら意味がないので,マンションの廊下は密閉されていなければならない.これは廊下から外に逃げられないことを意味する.
また,誰かが訪ねて来た時にその家の人がマンションの玄関を開ければ,その家だけに行ける訳ではなく,どこの部屋に行くこともできるわけで,自分がいくら気をつけても他の人が開けてしまえば意味がない.鍵を開けさせるためには宅急便を装うなどすれば簡単だ.最近では,宅急便受け用のロッカーがついていたりするが,誰一人として「外部」の人間を入れないようにすることはできないだろう.だいたい,犯罪を犯すのが「外部」の人間に限られるわけでもない.怨恨による殺人などがよく起きるが,それは「内部」の人間による犯行だ.
わたしが住んでいるマンションの敷地内には玄関からでも駐車場からでも簡単に入れるし,建物内には玄関からでも2つの階段(玄関を通らずに駐車場から直接階段に行ける)からでも簡単に入れるが,それは出口が多く,かつ出やすいことを意味する.廊下は密閉されておらず前の道路から丸見えで,2階くらいだったら廊下から外に飛び降りることも可能だ.
極端な例を考えてみればわかりやすい.
道で向こうから包丁を持った人が来たら,反対方向に逃げればよい.逃げ場所はいくらでもあるし,途中に障害となるような「扉」はどこにもない.これは道が誰にでも解放され,誰でも「出入り」できるからだ.「敵」を侵入させないためには「塞ぐ」のがよさそうだが,それは同時に自分をも閉じ込めることになる.
アメリカで最近増えつつある Gated Community も規模を拡大しただけで,基本的には同じことが言えると思う.たしかに,その中では犯罪は減るだろうが,それは犯罪の発生分布地図を塗り替えているだけで,その中から一歩も出ずに生活することができない以上,犯罪にあう確率を減らしているとは思えない.
わたしたちは「外部」の人間による犯罪だけでなく「内部」の人間による犯罪にも遭うということ,住んでいる家でだけ犯罪に遭うわけではないということ,さらに他人が入りにくい家は自分も出にくいということを考えれば,オートロックだろうが Gated Community だろうが防犯には役立たないと思う.
ただ,「安心」なるものが最初から主観的なもの,実際の状況がどうであれ自分がどう思っているかというものであることと,「安心」はないよりはあるほうがいいことを考えると,オートロックも「なぐさめ」としての意味はあるだろう.わたしはイヤだけどね.