10月8日付・編集手帳


跳躍一番、リングの真上からボールをたたき込めば、外れようがない。バスケットボールの華ともいうべきダンクシュート、その強烈なものをスラムダンクという◆「(大量破壊兵器が存在する)確信があるのか」と尋ねるブッシュ大統領に、中央情報局(CIA)のテネット長官は「スラムダンクです」とシュートのまねをした。イラク戦争を決断する米国の内幕を描いたボブ・ウッドワード著「攻撃計画」(日本経済新聞社)のひとこまである◆「開戦時、イラク国内に大量破壊兵器は存在せず、開発計画もなかった」。米国政府調査団の結論が出たいま、開戦を決断する際の情報分析に問題があったことは明らかである◆人は過去を振り返る時、神になり得る。大量破壊兵器がなかった以上、開戦に踏み切ったのは誤りだった――という声は音量を増すだろう◆報告書は、「大量破壊兵器を再び保有する意図があった」とも述べている。自由世界への憎悪を仲立ちにサダム・フセインと国際テロリストが連帯する。その最悪のシナリオが、フセイン帝国の崩壊で消滅したことの意義は小さくない◆幻のリングを狙った一見お粗末なダンクシュートが結局は、どれほどの数の人命を将来の大規模テロから未然に救ったか。「避けられた未来」を見つめる時、人は神の目を持ち得ない。
小泉首相はブッシュの言い訳を繰り返し,読売新聞は60年ほど前のホワイトハウスによる原爆投下の口実を繰り返す.
ひょっとしたら将来,アメリカ国民がフセインによって殺されるかもしれない.だから,いまのうちに確実にイラク国民を殺しておけ.こんな主張をわたしは認めない.