鈴木元議員の「懐刀」、内幕描く手記25日出版

鈴木宗男で思い出したので,これを機会に.
伊勢崎賢治武装解除」(isbn:4061497677)には次のような記述がある.

・・・官民コラボレーションとか,「金は貰っても魂は売らない」とか言い張っても,まったくの自慰行為である.官は国益以外の目的で民間に税金を託さないし,事実,日本におけるODANGOのコラボレーションは「金のないNGO」と「顔の見える外交ができない日本政府」が相互に依存し合わなければならない状況で始まった.公的資金を受けないと死活にかかわるNGOは,この時点で,非政府でなくなり,国策,つまり日の丸を背負うことになる.

鈴木宗男の「悪行」のひとつとして当時報道された中にNGOのへの口出しがあった.そこで名前が出てきたのが「ピースウィンズ・ジャパン」というNGOであったが,この団体のサイト内にある会計報告を見ると,2003年度の収入総額約14億円のうち約1億円が政府からの補助金である.さらに,収入の内訳で最大のものが「助成金収入」であるが,この助成金を出している団体の中にはNGOの「ジャパン・プラットフォーム」がある.この団体の2002年度の会計報告を見ると,収入総額7億円のうち83パーセントが外務省からのカネであり,支出の95パーセントがNGOの助成にあてられている.したがって,「ピースウィンズ・ジャパン」の収入のうち政府からのものは1億円以上あり,カネの面から見ればとてもNon-Government とは言えない.なお,鈴木宗男に「いじめられた」代表者(大西健丞)は「ピースウィンズ・ジャパン」の総括責任者であると同時に,「ジャパン・プラットフォーム」の議長でもある.

カネを政府から貰っているだけではない.「ピースウィンズ・ジャパン」のサイト内を探しても日本政府が支持したイラク侵略戦争に対する抗議はまったく見当たらない.それどころか,「今回のイラク緊急支援では、政府や財界、財団関係者ら各界のみなさんのご理解もいただき」という表現すらある.イラク侵略を支持した日本政府の「理解」を得た活動を「中立」などとは呼ぶことはできない.さらに,「開戦前:危機想定し万全の備え」などと,まるで戦争を待ち望んでいるかのようである.

要するに「ピースウィンズ・ジャパン」にしろ,「ジャパン・プラットフォーム」にしろ,外務省の別働隊とでも呼ぶべき団体である(ジャパン・プラットフォームの評議員には外務省の現役官僚が入っている).だから,自衛隊イラク派兵に反対する中で「NGOの中立性が損なわれる」という主張があったが,そもそも最初から--「中立」という立場がありえると仮定して--「中立」ではないNGOもあることも考慮に入れれば,このようなスローガンは適切ではない.むしろ「中立」を装っている分,たちが悪いかもしれない.

話を鈴木宗男に戻そう.

この団体(の人間)は政府からカネをもらい,政府の方針にしたがって行動しているのだから,その点からすれば外務省の職員(官僚)と変わらない.そして,彼は日常的に外務省の職員を呼びつけて,怒ったりしていたようだが,それが問題視されることはなかった.だから,NGOの人間に文句を言うことが問題視されるとは予想していなかったのだろう.

当時は「「悪い」鈴木宗男が「良い」NGOに口出しした」という感じの雰囲気で伝えられていたが,この団体の実情を見れば,それは鈴木宗男には少し酷だったと思う.