マーガリン取りすぎ注意

妊婦さん、マグロ控えめに」を見たときにも思ったけれど,要するにどんな食べ物でも取りすぎはよくないわけで,いちいちいろいろな食べ物について調べる必要があるのだろうか?それこそ,最近の流行り言葉で言えば「税金のムダ遣い」だと思う.
有害な物質が含まれた食べ物を取ることによる影響よりも,「あれを食べるな,これを食べるな」,「食べ過ぎに注意,適度にしろ」と言われる方が,ストレスになって体に悪いような気がする.
たとえば,「あなたはウチの会社にとって大切な人間ですから,これからあなたの健康を管理します」と言われて,次のようなことになったとしよう.
まず職場に着いたら,昨晩食べたものおよび今朝食べたものを報告.もちろん醤油を何ミリリットル使ったかも含めて.それから睡眠時間,排便の有無等々もすべて報告.昼食は自由に選べず,指定されたものを食べる.午後の仕事を始めてからしばらくすると,体重測定などの簡単な健康診断があり,昨晩と今朝の食事に対するアドバイスもふくめて簡単な問診.その次は決められたメニューにしたがって運動.夏休みなどの休暇中は食事のたびに携帯のカメラを使って報告.「それはダメです」と言われる場合もある.睡眠時間等はメールで必ず報告.
きっと,病気になると思う.
これはもちろん極端な例だが,人は他人から管理されることそれ自体にストレスを感じるわけで,「特定のモノばかり食べるのはよくありません」以上に,あれこれ口を出さなくてもいいと思う.マグロで水銀を取らなくても,いずれにしろ別の食べ物で別の「毒」を体内に取り込んでいるのだから,特定のモノに敏感になっても仕方ない.健康を気にするあまり,食べ物に敏感になりすぎて何も食べられなくなって餓死する人もそのうち出てくるかもしれない.
だからといって,「政府は健康に関して何もするな」と言いたいわけではない.政府がやるべきことは口を出すことではなく,カネを出すことだ(と言っても,政府が出すカネは税金,つまりわたしたちが出したカネだけど).喫煙にしろ飲酒にしろ,口ばかり出す一方で,出すカネはどんどん削っている.
これは健康だけの話ではない.教育にかけるカネを減らしながら,口だけは達者に「愛国心を持て」だのどうのこうのうるさい.「チャレンジしろ」,「リスクをとれ」など,「経済教育」とやらまで始めようとしている.カネの使い方くらい,自由にさせてくれと言いたい.あれこれ説教されたり,命令されたりすると「お前は金正日か?」とでも言いたくなる.
しかも,この「経済教育」にいたっては完全に転倒しているとしか言いようがない.「合理的な意思決定」なるものは,説明の便宜のために導入したもので,つまりこうした人間を想定しないとうまく説明がつかない--正確に言えば,それなしでは「理論」にならない--からである.それにもかかわらず,「経済学に登場する人間はこうなっているから,お前らもそうなれ」と言っているわけだ.まさか人間が皆「経済学的人間」になれば,現実の経済現象に対する説明がもうちょっとうまくいくと考えているわけではないだろうが.
健康だろうが教育だろうが,カネで測れば政府は小さくなる一方で,口だけはどんどん大きくなっている,というのが現状だろうか.「反戦」や「日の丸・君が代」に関しては「口」だけじゃなくて,実際に「手」も出し始めているけどね.