大量破壊兵器――なかったからには

「これを機会に米欧が仲直りしてイラク再建に取り組もう」と主張するこの社説には,米主導のイラク侵略によって殺されていった人たちのことは,ただの一言もでてこない.
イラク大量破壊兵器を持っていたとしたら,なぜイラク国民は殺されなければならないのだろう.フセインホワイトハウスの助けを借りて自国民にひどいことをしていたら,フセイン体制のもとで苦しんでいたイラク国民はなぜ殺されなければならないのだろう.
今でも毎日のようにイラクの人たちを殺しまくっている米主導の多国籍軍の撤退にふれることなく,「仲直りして,いっしょに再建しよう」と呼びかけるこの「余裕」はどこから来るのだろう.
イラクの再建を大いに助けたい」?殺人事件の加害者が被害者家族の「再建を助けたい」などと発言したら,マスメディアではどんな取り扱いになるのだろう.
大義をめぐる長い論争に決着がついた」?「大義」をめぐって論争となった殺人事件がこれまでにあったのなら,教えて欲しい.「ホワイトハウスがウソをついた」と騒ぐことによって,「大量破壊兵器の有無」をイラク戦争の「争点」に仕立て上げた責任から自分たちは逃れるつもりだろうか.
「限界」,すなわちある程度までは意義を認めることができるような殺人事件があったのなら,教えて欲しい.わたしから見えるのは,「対テロ戦争」という名の侵略戦争を肯定する朝日新聞の「限界」でしかない.