家族のきずな「弱くなっている」84%…読売世論調査

日本人のしつけは衰退したか (講談社現代新書)」(広田照幸)によれば,「昔はしつけが厳しかった」というのは錯覚である.実際は放任や虐待がめずらしくなかった.
この本では昔の実状に続けて,「しつけができなくなった」という錯覚が生まれる状況について書かれているが,わたしなりにたとえ話を使って要約すれば,次のようになる(読んだのがだいぶ前なので,きちんとした要約になっているのか自信がない).
今,共働きの夫婦がそれぞれ毎月20万円ずつ,合計40万円稼いでいたとしよう.離婚して,母親が子どもを引き取り育てることになった.母親は残業を増やすなどして,25万円稼ぐようにしたが,稼ぎが以前の40万円から25万円に減る一方で,子どもの成長につれお金もかかるようになり,生活が苦しくなったように感じられた.
これは母親の稼ぎが減ったことによって起こったのではない.母親の稼ぎは逆に増えているにもかかわらず父親の稼ぎがなくなったことと,子どもの成長によって起こった「生活の苦しさ」である.これを,「母親の稼ぎが減ったことによって生活が苦しくなった」と考えてしまう錯覚が,しつけに関する見方にも起こっている.

家庭は以前よりもはるかに厳しい「しつけ」をしている.それにもかかわらず,子どもが何かことを起こした時に,すべてを親の「しつけ」に帰着させるプレッシャーが「問題」--あるとすればの話だが--を解決させるとはとうてい思えない.