死刑を容認、過去最高の81%…内閣府調査


容認の理由(複数回答)は、「凶悪犯罪は命をもって償うべきだ」が54・7%で最多。「廃止すれば凶悪犯罪が増える」が53・3%、「廃止すれば被害者や家族の気持ちがおさまらない」が50・7%で続いた。

「抑止効果」が想定しているのは,他人に殺意を抱いた人間が「今殺したら,捕まって死刑になる確率がこれくらいで,殺したことによるメリットがこれくらいだから,じゃあやめとこう」という心理である.

今の日本では1人を殺しただけでは実際上死刑にはならない.そうすると2人以上を一度に殺してしまうような人間が,これほど冷静に,合理的に損得の計算をするのだろうか.そのような計算を超えてしまった人だけが殺人を犯すのであって,計算できるような人間が殺意を持って人を殺すとはわたしには思えない.

抑止効果を持つというのであれば,世論調査の際には「もし,死刑が廃止されたら,あなたは人を殺しますか?」という質問も同時にして欲しい.そのような人が多数であれば,抑止効果はあると言えるかもしれない.しかし,多くの人にとっては万引き程度ならともかく,人を殺すことは法律による罰の有無にかかわらず,ためらうものだと思う.だから,逆に言えば,万引きは即死刑という法律を作れば,間違いなく万引きは減るだろう.万引き程度の犯罪をする人間は殺人を犯してしまう人と比較すれば,まだ合理的な計算のできる人間だからだ.

次に,賛成の理由として「廃止すれば被害者や家族の気持ちがおさまらない」が多くの人によってあげられていることについて考えてみよう.

まず第一に,家庭内で殺人事件が起こることもあるのだから,被害者家族だけを加害者または加害者家族と分離して持ち出すことには無理がある.この場合にも被害者家族--それは同時に加害者家族でもある--は死刑にならないと気持ちがおさまらないのだろうか.

わたしにとって興味深いのは,なぜシンパシーはつねに被害者家族に対してのみ向けられ,加害者家族に向けられることはないのか,という点である.それは,おそらく自分もそうした立場になりうると想像するからで,逆に自分が加害者または加害者家族になることは想像できないからだろう.

しかし,朝笑って家を出た,あなたの大切な人が夕方に殺人事件の犯人としてテレビででかでかと報道され,「死んで当然だ」という声が日本中にあふれかえっている,このような状況がいつ起こるかわからない.警察や拘置所にいる人にはその声が届くことはなく,事件が起こっても市中でひとりの人間としての生活を送らねばならないあなたが耐えなければならない.被害者の家族がそうであるように,加害者の家族もその後,ずっと苦しみ続けなければならない.被害者の家族の「死刑を希望する」という声は異論の許されない主張として流される一方で,加害者の家族に期待されていることは謝罪だけである.自分の家族が殺されようとしている時に,「やめてくれ」という声をあげることは,どうして許されないのだろう.

「凶悪犯罪が増加している」と聞けば,まず自分が,あるいは自分の家族がそのような事件に遭わないか心配になる人が多いと思う.しかし,それは同時に自分が加害者の家族になる確率も高まっているということである.どういうわけかこちらはあまり思い浮かぶことがないらしい.1枚のコインの裏表なのに.

北朝鮮が攻めてくる」,「テロリストが入国」,「外国人犯罪の増加」,「不審者を入れない学校の警備」,「セキュリティ万全のマンション」,受け入れられやすいこうした言葉のすべてに共通するのは「敵」がどこか「外」からやって来るという考え方である.自分「たち」--その範囲はいろいろだけれど--は被害者になることはあっても,「身内」から加害者がでることはないという奇妙な,そして根拠のない確信が多くの人に共有されている.

しかし,学校では生徒が友だちを殺してしまうこともある.ニュースを見れば,容疑者として親,子ども,老人ホームの介護職員,夫の兄,知人,交際相手,同居人,同僚等で,見ず知らずの人にいきなり殺されるケースの割合はいったいどれくらいなのだろう.「外国人犯罪」と言うけれど,日本における犯罪の圧倒的多数は「日本人」によるものだ.北朝鮮とは比較にならない武器を持った自衛隊在日米軍イラクにおける米軍の大量殺人と破壊を支援している自衛隊.この100年間で国家は約2億人を殺し,そのうち約1億3千万は自国民だ(ダグラス・ラミス「経済成長がなければ・・・」isbn:4582765130).

話を死刑に戻そう.

加害者家族になってしまったことで苦しみ,それに加えて国家によって家族が殺される,その状況を想像してほしい.なぜなら,次に何か起こった時,加害者はあなたの家族,仲間あるいは「味方」かもしれないのだから.


追加:来日外国人の犯罪件数、過去最多 逮捕・送検2万2千人
ちょうど都合よく割合が計算できるデータを発表してくれた.警察庁「犯罪統計資料」から来日外国人による割合を計算すれば,殺人40/1342=3.0%,強盗269/3666=7.3%,窃盗27518/447950=6.1%である.