「成果主義」って何ですか

成果主義」の柱のひとつである「客観的な評価」が上手くいかない点については,高橋伸夫「〈育てる経営〉の戦略」(isbn:4062583283),「虚妄の成果主義」(isbn:4822243729)が明らかにしている.
要点は,あらためて「客観評価」など行わなくてもすでに上司は部下を評価している,またほとんどの人間は「どんぐりの背比べ」であるので,点数によって「客観的に」差をつけようとすることには無理がある,というものだ.しかもこの「客観」なるものが実際には「客観=誰のものでもない見方」という形での無責任でしかないことも説明されている.
より一般的に,仕事だろうが教育だろうが「これをすればあれをあげるよ」というやり方が上手くいかない理由についてはアルフィ・コーン 「報酬主義をこえて」(isbn:4588007041)が勉強になった.コーンもこの本の中で高橋と同様に,はっきりと「仕事と賃金は切り離さなければならない」と述べている.面白いところを一箇所だけ引用しておこう.

「この問題について20年前に公刊された文献を見てみると,今日発表されるものとほとんど変わりがないことに気づくだろう.専門家は当時も今も,業績給制度がうまく運用されていないと批判している.・・・新しいやり方[が取り入れられたのに]・・・結果はまったく変わらないようだ.」
この評言はけさ書かれたと言っても通りそうだが,実は1975年のものである.(180ページ)

(「」内は引用中の引用).
なお,同じ著者による「競争社会をこえて」(isbn:4588004360)は,「人は競わせれば上手くやる」という素朴な観念をくつがえしてくれる点でとても勉強になった.