Time to Break the Silence

沈黙を破るとき
William E. Connolly
8月22日


テキサス州クロフォードにおけるシンディ・シーハンの抗議--戦時大統領はそこで5週間の夏休みを取っているのだが--は難しい問題を投げかけている.泥沼に陥ったベトナム戦争時に見られたような規模の抗議運動がなぜ今日存在しないのか?シーハンは明らかに痛いところをついた.

数千人のイラク人と米国人が殺され,ひどい怪我を負い,戦争が生み出したテロのリスクは高まり,そしてイラクでは高い確率で内戦になりそうな状況である.それでもなお,これほど多くの米国人がこの惨劇について沈黙しているのはなぜか?

どれほど命,安全,カネそして高貴なアメリカ的価値を犠牲にしようとも何とも思わないブッシュ政権の傲慢を擁護しようとする人が多いことについて言っているのではない.わたしが言っているのは,この戦争は,自分たちが次の世代にツケを支払わせることになるであろう恐ろしい間違いだったと気づいた人たちのことである.

この沈黙についてはいくつかの理由があげられるだろう.まず,侵略がどれほどの間違いであったか気づいた多くの人は,われわれは戻るべき場所のない泥沼にはまってしまったと考えている.たしかに撤退は簡単ではない.だからこそ,他国を侵略する前に立ち止まることが大切だったのだ.

しかし,米国が間違いを認め,世界中から許しを請い,国連に平和維持軍を派遣してくれるように要請し,そのために莫大なドルを支払う約束をすることもできるかもしれない.議論の余地はあるにせよ,それは現在の政策を改善するだろう.他の選択肢もまた考えられうる.

しかし多くの人はこのような可能性を考慮することすら拒否している.なぜか?撤退はありえないとする判断の内側では,2番目のためらいがくすぶっている.

(2番目の理由とは)数百万人のアメリカ人にとっては,戦争前にブッシュ大統領新保守主義評論家によって押し付けられたアメリカの道義的正当性と全能という神話を自分たちが共有していたことを認めることは難しい.彼らはその失望を匿名の投票によっては表明するが,公然と反対することはない.

3番目の理由は,最初の2つを補強する.今日では電子ニュースメディアは「やり遂げる」ことに対するクルクル変わる正当化のための場所を提供している.しかし,代替的意見をはっきりと述べることのできる公共的な場は存在しない.彼らがそうしたことを,たとえば Hannity-Colmes Report や The O'Reilly Factor(どちらもテレビ番組の名前--訳注)でやろうとすれば,番組で話し始める前に内容について相談し,そして非愛国者として非難されることはわかっている.

沈黙の最後の理由は,もはや徴兵制のないこの国では,中・上流のアメリカ人にとっては自分たちの子どもをこの冒険によって失ったり,ひどい怪我をするリスクはほとんどないということである.多くの車につけられている「われわれの軍を支持しよう」リボンの偽善性は,リボンをつけている者のごくわずかしか自分たち自身,あるいは自分たちの子どもをイラク占領に参加させていないという点にある.

これらの説明は沈黙を説明することには役立つかもしれないが,悲惨さを考えれば,沈黙を正当化することはできない.われわれ全員が今,声を上げなければならない.さらに,一度は戦争を信じ込んでしまった人は,どのようにして自分たちがだまされたのかを説明するという特別な義務を負っている.このような義務を果たすことは,将来再び国が戦争に突き進んでいくことに対する予防接種となるからこそ大切なのだ.

米国,カナダ,フランス,英国,ドイツ,インド,スペイン,日本,オーストラリアその他の国々の数百万人が最初から通して見ていたストーリーをブッシュ支持者が受け入れた時,彼らの視界を曇らせたアメリカの道義的正当性と全能性という神話的見方とはどのようなものであったのか?

戦争に導いたウソ,戦争への同意を煽った傲慢さ,そして戦争がまねいた命,国内治安,中東の安定,国民の評判,カネというとほうもない代償を今,おおやけにすることはわれわれ全員に課せられた義務である.

われわれが声を上げていくことは,アメリカに対する評価が下がってしまった世界中のいろいろな国の市民--アメリカの爆撃による市民の犠牲やアブグレイブグアンタナモ強制収容所についてよく知っている--との壊れてしまった関係を修復することになるだろう.

最後に,われわれはブッシュ政権の国家テロとアルカイダの非国家テロのどちらも忌まわしいものであると考えているムスリム信仰者を交えたさまざまな国の市民との対話を始めなければならない.

自分の国が戦争をしている時に,公然と抗議することは困難である.しかし,無謀で破壊的で非良心的な戦争に直面している中では,こうした困難は沈黙を正当化するものではない.


William E. Connolly は the Krieger-Eisenhower Professor of Political Science at Johns Hopkins University であり,Pluralism(isbn:0822335670)の著者である.

原文はCommon Dreams でも読める.コノリーの日本語に訳されている著作としては「政治理論とモダニティーisbn:4812293081
米国においても撤退を望む声が大きくなりつつある中で,小泉首相はいつまで自衛隊を派兵しておくつもりだろう.自宅前に自衛隊員の母親が立つのを待っているのだろうか.