派遣労働者働く事業所は3割、大幅増加…厚労省調査

消費税は派遣などの「外注」タイプの非正規雇用を増加させる方向に働く.そして消費税率のアップは,正社員よりも派遣を使うことの企業にとってのメリットを拡大する.
仕組みを説明する前に,まず派遣会社や「節税」のサイトを見てもらいたい.


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弱小人材派遣会社社長のブログ

税理士藤本事務所


このように派遣会社は「消費税がおトクですよ」と派遣のメリットを説明し,税理士も節税の方法として派遣を勧めている.
なぜ派遣にすると節税になるのか.それは消費税の「仕入税額控除」という仕組みにある.
たとえば,今,A社が1万円でB社から原材料を仕入れ,それを加工して1万5000円でお客に販売したとしよう.この時,A社が納める税額は


1万5000円 x (5/105) = 714円


ではない.A社は1万円でB社から購入した原材料についてはすでに


1万円 x (5/105) = 476円


の消費税をB社に支払っているので,A社が納めるべき税額は


714円 - 476円 = 238 円


となる.476円はA社ではなくB社が納める.この2社によって合計で714円が国に納められる.
派遣などの外注はこの場合の原材料と同じ扱いになる.ところが自社で雇った場合の賃金は消費税の課税対象ではないので控除できない.
たとえば,A社が30万円を派遣元に支払って人を雇い,50万円の商品を売ったとすれば,収めるべき消費税は,


  50万円 x (5/105) = 2万3810円 ---------- (1)
  30万円 x (5/105) = 1万4286円 ---------- (2)
  (1) - (2) = 9524円


という計算によって9524円になる.
他方,自社で雇い,労働者に30万円雇った場合には,(1)の2万3810円が納める税額となり,(2)の1万4286円分が節税となる.
上の例は同じ30万円を支払うケースであるが--といっても派遣される人間が30万円まるまる受け取れるわけではないが--,実際には福利厚生費等を考えれば,派遣の方が安上がりであるので,派遣をつかうことは節税と安い人件費という二重のメリットがある.
たとえば,人件費が正社員の80パーセントの24万円で済むとしよう.この場合,


 24万円 x (5/105) = 1万1429円 ----------- (3)
 (1) - (3) = 1万2381円


が納めるべき税額となる.したがって派遣の場合の(法人税課税前の)儲けは


 50万円(売上)- 24万円(派遣費用)- 1万2381円(消費税)= 24万7619円


であり,正社員の場合には


 50万円(売上)- 30万円(人件費)- 2万3810円(消費税)= 17万6190円


となり,派遣の場合と比較して24万7619円 - 17万6190円 = 7万1429円だけ儲けが増える.
上の計算は消費税率が5パーセントの場合であるが,これが10パーセントになるとどうなるか.
派遣を使った場合には,


 50万円 x (10/110) = 4万5455円 ---------- (4)
 24万円 x (10/110) = 2万1818円 ---------- (5)
 (4) - (5) = 2万3637円
 50万円 - 24万円 - 2万3637円 = 23万6363円


となり,利益は23万6363円.正社員の場合には,


 50万円 - 30万円 - 4万5455円 = 15万4545円


となり,利益は15万4545円であるから,比較すると8万1818円だけ利益が増える.消費税率が5パーセントの場合にはこの差額は7万1429円であったから,消費税率がアップすれば派遣を使った場合と正社員を雇用した場合の差は広がる.したがって企業にとっては派遣を利用するメリットがさらに拡大する.
今後,消費税(率)をめぐる議論--それは上げるか上げないかの議論ではなく,いつ,どれくらい上げるかという議論になるだろう--が盛んになると思われる.派遣や請負という形での雇用が拡大することそれ自体の是非は別としても,議論はこうした点も踏まえて行われるべきだろう.