禁煙リベラリズム

喫煙が変えやすい要因だから選ばれているという意見には賛成です.わたしとしては「調べやすくて,変えやすいと思われている要因だから」と言いたいですが.
Sugiyama さんのように「変えやすいから選ばれた」と理解されている人ばかりだといいのですが,現状では「喫煙は肺がんの唯一最大の要因である」と誤解している人が多いと思います.だから,反喫煙の風潮がここまで広がったのでしょう.
わたしは遺伝よりも長時間労働や経済的格差といった社会的な要因の方が重要なのではないかと思っています.喫煙のみにスポットライトが当てられているのは,こうした要因を隠したいという意図もあるのでしょう.
こうした問題はすぐにひとりでどうにかできるものではありません.しかし,喫煙それ自体がそうであったように--昔は電車の中でも喫煙が自由だった--変えられないものではありません.どういうわけか,こうした要因については調べられてはいるのでしょうが,大きく取り上げられることもありません.
企業メディアは広告がなければ営業が成り立ちませんし,与党は企業からの献金をもらっているわけですから政権が長時間労働反対のキャンペーンを打つこともないでしょう.その代わり,反喫煙キャンペーンには相当の努力を傾けています(「タバコ規制のための国家能力の構築 ハンドブック」とくに「9.メディアとの連携」).
社会的な要因は変えるのが大変だからと,その影響がどれほどの大きさなのか,きちんと調べずに放置しておく--放置どころかホワイトカラー・エグゼンプションによって長時間労働をさらに拡大しようとしている--一方で,禁煙は簡単だからと,ただひたすらに喫煙(者)に対するバッシングを強めても,喫煙率が低下するだけの効果しかないでしょう.日本の時系列データを見る限り,それは肺がん死亡率とはあまり関係がないようですけどね(肺がん死亡率(pdf)喫煙率).