やはりマスコミがひた隠しにする郵政解散の理由と争点

今回の解散の理由、選挙の争点は全てこれに集約される。
そしてこれを補完するのが、コメント欄でも紹介してあった、自民党中川秀直国対委員長の↓この発言

「歳入が40兆円しかないのに支出が80兆円もある。こんな事で国が持つ訳が無い。80兆のうち40兆は公務員の給料。それを削るには公務員を減らすしかない。だから経営が優良な郵政からやる。これが出来なきゃ公務員なんか減らせるわけ無い。日本は持たない」

もし周りに「郵政民営化?良く分かんな〜い」とか言ってる人にはこの二つの発言だけでもプリントアウトして見せりゃいい。この考え方に賛同する人は自民党を応援すればいいし、反対する人即ち「大きな政府、官主導で結構、役人天国もやむを得ない」という人は民主党自民党から公認を与えられなかった守旧派に投票すればいい。

40兆円が国家公務員の給料???
2005年度の一般歳出が約47兆円で,一般会計歳出(=一般歳出+地方交付税国債費)が約82兆円である.40兆円が人件費だとすれば一般歳出のほぼすべてが人件費に消えていることになる.「国家公務員人件費 一般歳出の9.8%」にあるように,正確には人件費は4兆6500億円だ.勝手に10倍してはいけない.


追加:リンク先のコメント欄を見たら,予想されたことではあるが「公務員の人件費が40兆円はおかしい」というものがあった.他方で,まったくの予想外だったのが,「地方公務員の人件費を入れたらそれぐらいになる」とか「地方交付税で地方公務員の賃金が支払われている」等の理由で40兆円は正しいというコメント.
「収入が40兆円,歳出が80兆円」とあるのだから,これは中央政府(国)の話である.地方公務員の人件費を考えるのであれば,地方のやりくりも加えなければ比較にならない.
2003年度の場合で言えば,国の歳出総額が81兆円で,地方が95兆円.地方公務員の人件費が26兆円だから,人件費の総額は31兆円(数字は財務省および総務省).
つまり地方も含めて問題にしたいのであれば,「80兆円のうち40兆円」ではなく,「176兆円のうち31兆円」である.
なお,人件費の割合を計算するにあたって地方交付税や国庫支出金(いわゆる「ひもつき」)の問題はまったく関係がない.「交付税から賃金が払われている」を云々するのであれば,地方の歳出からその分の人件費を差し引かなければ二重に計算されてしまうからだ.

 郵政族議員を落選させよう

Q&Aがおもしろい.というか,それ以外はただの名簿.
素朴な疑問だけれど,公共セクターの比重が現在よりも大きかった60年代や70年代の方が平均成長率が高かったことを,この人はどうやって説明するつもりなんだろう(だからといって,公共セクターの比重が大きければ大きいほど成長率が高くなると言いたいわけではない).だいたい,「経済学的な知見」を持った人が「日本全体の平均給与」なんて言葉遣いをするかな.
ついでに,いくつかの点にふれておこう.
まず,「郵貯が集めた資金がムダなことに使われているから民営化しろ」という意見について.
これは,たとえて言えば「お前は今,A社で働いていて,そこで得た賃金を浪費しているから,B社で働け」と言っているに等しい.いや,正確に言えば「仕事を辞めてしまえ」と言っているようなものである.問題は「浪費」であって,所得を得ていることではない.浪費癖をもった人間が仕事を辞めれば,消費者金融等から借りるだけの話である.
ふたつめ.「郵貯のコストは国民負担」という意見について.
コストを負担しているのが国民なら,そのコストによって「安心」という便益を受けているのも同じ国民である.要するに政府を通じて,税金という形で「安心」を買っているだけのこと.負担が減れば便益も減る.
最後に,わたしは「肥大化」という言葉を使う人の主張はまともに聞かないことにしている.「肥大化」=「大きくて,よくないこと」という意味で一般的に使われており,したがって「肥大化しているから,よくない」というのはトートロジーで理由になっていない.「赤ん坊が成長している」とは言っても,「赤ん坊が肥大化している」とは言わない.

 小泉内閣総理大臣記者会見

「既得権を守る」,あるいは「既得権益固執」という言葉で語られるのは,この郵政民営化だけに限られたことではない.しかし,既得権が守られない社会というのはどんな社会だろう.
たとえばあなたが社会人なら,「お前より優秀な人を採用するから,お前はクビだ」という企業の行動が何の問題もなく認められる社会.学生なら「お前よりも優秀で,卒業後は確実に就職してくれる学生を編入させるから,お前は退学だ」という学校の行動が認められる社会.あるいは,あなたが賃貸マンションに住んでいるのであれば,「お前よりも高い家賃を払って住みたいという人がいるから,お前は出て行け」という貸主の行動が認められる社会.
こんな社会で生きていくのは,わたしにはちょっとつらい.不安で不安でしょうがない.社会人であれば,不安で仕事に集中できない.学生だったら,落ち着いて勉強できない.
「既得権」でも,「コネ」でもいい.そうしたものがすべて消えた社会を,わたしは想像できない.自分が既得権に守られていることは忘れて,他人が守られている時には「けしからん」と言い,自分がコネで就職--たとえば同じ大学の先輩後輩関係--したことは忘れて,他人が人とのつながりを使って就職すればコネを使ってずるいと言っているだけのような気がする.それとも既得権には2種類あって,自分が関わる既得権は「良い」既得権で,他人が関わる既得権は「悪い」ものということだろうか.
参考までに記しておくと,小泉首相は父親も祖父も政治家で,竹中大臣は兄が会社社長である.