小泉内閣総理大臣記者会見

「既得権を守る」,あるいは「既得権益固執」という言葉で語られるのは,この郵政民営化だけに限られたことではない.しかし,既得権が守られない社会というのはどんな社会だろう.
たとえばあなたが社会人なら,「お前より優秀な人を採用するから,お前はクビだ」という企業の行動が何の問題もなく認められる社会.学生なら「お前よりも優秀で,卒業後は確実に就職してくれる学生を編入させるから,お前は退学だ」という学校の行動が認められる社会.あるいは,あなたが賃貸マンションに住んでいるのであれば,「お前よりも高い家賃を払って住みたいという人がいるから,お前は出て行け」という貸主の行動が認められる社会.
こんな社会で生きていくのは,わたしにはちょっとつらい.不安で不安でしょうがない.社会人であれば,不安で仕事に集中できない.学生だったら,落ち着いて勉強できない.
「既得権」でも,「コネ」でもいい.そうしたものがすべて消えた社会を,わたしは想像できない.自分が既得権に守られていることは忘れて,他人が守られている時には「けしからん」と言い,自分がコネで就職--たとえば同じ大学の先輩後輩関係--したことは忘れて,他人が人とのつながりを使って就職すればコネを使ってずるいと言っているだけのような気がする.それとも既得権には2種類あって,自分が関わる既得権は「良い」既得権で,他人が関わる既得権は「悪い」ものということだろうか.
参考までに記しておくと,小泉首相は父親も祖父も政治家で,竹中大臣は兄が会社社長である.