闘論:禁煙指導への保険適用 佐藤誠記氏/富永祐民氏

喫煙によって必要以上にかかる超過医療費も、約1兆3000億円に達しているとの研究がある。
数字はどうでもよい.おそらく,「スポーツ・イベントの経済効果」と同じくらいの「正確さ」はもっているだろう.
「必要以上にかかる医療費」という言い方は,医療費には「必要な」分とそれを超えた,「必要以上」のムダな医療費があるということを意味している.ここで言われている「必要以上にかかる超過医療費」とは何かといえば,「ある行為をやめることによって,発生を抑えることのできる医療費」のことである.そして,それは必要でないがゆえに抑えるべきものである,と.
この議論は喫煙以外にも,簡単に応用できそうだ.
出生前診断によって,生まれてきた後に「ふつうの人」よりも医療費がかかることがわかっていても出産した親に向かって,「あなたが中絶していれば(産むのをやめていれば),この子に必要以上の医療費がかかることもなかったのですよ」というのも,ひとつの応用だろう.安楽死尊厳死)が法制化されれば,「あなたが早く死を決意すれば(生きるのをやめれば),医療費は必要以上にかかりません」という応用もできる.
「必要/不必要な医療費」という言い方は,「必要な(生きるに値する)/不必要な(生きるに値しない)命」という区別の一歩手前まで来ている.もっとも,反喫煙の立場に立つ人間がそこまで来ていることに,驚きはしないけれど.